top of page
検索

私が「心の鎧」に気づいた、その日 ─AJS株式会社 竹ノ下知子さんと The ART of Transition ─

  • 執筆者の写真: Hiroaki Terashima
    Hiroaki Terashima
  • 2025年12月21日
  • 読了時間: 8分

更新日:2025年12月24日


2025年11月7日、対話型カンファレンス「The ART of Transition 2025(AoT)」を開催しました。この場に参加してくださった一人が、AJS株式会社の竹ノ下知子さんです。当初は「自分には必要ない」と感じていたAoT。しかし、その一日を通して得た体験は、竹ノ下さんの仕事やチームへの向き合い方に、静かな変化をもたらしました。本記事では、AoTで何が起き、彼女は何を持ち帰ったのか。そのプロセスをAoT実行委員、寺嶋のインタビューを通じて振り返ります。「心の鎧」に気づく、それを脱ぐとは、どういうことなのか。その手触りを、言葉にしてもらいました。


まず、今のお仕事につい手教えてください


「今年の4月に新しい部署へ異動しました。長く同じ部署で仕事をしてきたので、環境も役割も人も、全部が新しい状態です。今は一つのお客様に対してITに関わる幅広いサービスを提供する部署に所属しています。その中で、IT利用時の問い合わせを受けるヘルプデスクを担うチームと、拠点展開や移転に伴うプリンター設置やネットワーク調整などを行うチーム、二つのチームを率いる立場にあります」


チームリーダーなんですね?

「はい、そうです」


「自分には必要ない」


まず、AoTに参加する前のお話から聞かせてください。正直なところ、最初はどう感じていましたか?


「イベントのお知らせを受け取った時、正直、最初は『自分には必要ない』と思っていました」

The ART of Transition(以下、AoT)への参加を振り返って、AJS株式会社の竹ノ下知子さんは、少し照れたようにそう話してくださいました。

「ワークの中身がATT(Ambitious Target Tree)だと聞いて、知っているフレームワークでもありましたし、私が行かなくてもいいかなと思いました。忙しい中で時間もお金もかかりますし、それなら他に必要な人も想像できたので、そんな人に紹介しよう、と」

しかし、その「紹介するために中身を読み込んだ時間」が、竹ノ下さん自身の視点を少しずつ変えていきました。


そこから「参加したい」に変わったきっかけは何だったのでしょうか?


「読み返しているうちに、これは私自身というより、私のチームに必要かもしれないと思うようになったんです。さっきお話しした通り異動してきたばかりの新しい部署なんですが、業務は回っているものの、メンバー同士が互いを深く理解しているとは言い難い状況がありました。お客様からはコスト削減や効率化を求められる一方で、現場としては『もうやり尽くしている』『打つ手なし』という感覚がみんなの中にあったと思います」

「この状況をどう乗り越えたらいいのか。共通の考え方や拠り所になるツールが欲しいと感じていました。そう考えたとき、AoTは「私のため」ではなく、「チームのため」の場なのではないかと思ったんです」

ここから、竹ノ下さんにとって初めての挑戦が始まりました。


会社に伝えるための翻訳。はじめての挑戦


会社として参加するためには、承認プロセスも必要でしたよね。


「はい。私にとって、これまで社外の学びは、ほとんど自費で、個人として参加していました。人に説明する手間や、伝わらなかったときの徒労感を避けるために、自分で休みを取って行ってしまうことが多かったんです」と竹ノ下さん自身のこれまでを振り返ります。

「でも今回は、チームで参加したい。そのためには、会社の時間と予算を使い、上司に説明し、納得してもらう必要がありました」

「でも、正直、『心の鎧を脱ぎ捨てて』というタイトルは抽象的で、そのまま持っていくと、上司は 「ん?」となりそうだなと思いました。なので、開催案内をそのまま渡すことをやめ、自分なりに内容を読み解き、言葉を翻訳し直した方が良いという考えになりました」

「そして『変革体験・価値創造のためのワークショップ』と表現しました。お客様からコスト削減を求められている一方で、現場は行き詰まっている。その状況を打開するヒントを探したい、という文脈で説明しました。課題と目的を整理し、自分の言葉で語り直す。そんなプロセスは、これまでの私にはなかった経験でした

 

承認プロセスの中で、参加のしやすさという点では、金額設定も影響しましたか?


「かなりありましたね」と、竹ノ下さんは即答します。

「正直に言うと、一人で参加するとなると、少し悩む金額ではありました。でも、複数人で参加すると一人あたりの金額が下がる設計になっていて、それがすごく誘いやすかったんです」

誰かを誘うときに、「これ、どう?」と声をかけやすいかどうか。その心理的ハードルを、価格設計が自然に下げてくれていたといいます。

「一人で行くより、二人、三人で行ったほうが安くなる。だったら『一緒に行きませんか?』って言いやすいですよね。実際、その誘い方ができたのは大きかったです」


「私の鎧」に気づいた瞬間


そのプロセスを振り返って、印象的だったことはありますか?


ある意味、それが私の鎧を脱いだところでもあったのかな、と思っています

この言葉には、静かな実感がこもっていました。

「私が必要だと思っていることを、周りの人も同じように必要だと思うわけではない。どうせ分からないだろう、説明するのは面倒だ、と思ってしまっていた自分がいたんです」

これまで竹ノ下さんが身にまとっていた「鎧」は、経験と自立心から生まれたものでした。一人で学び、一人で持ち帰る。そのほうが早く、確実だと思っていたということです。

「でも今回は、伝える努力をしてみることを選びました。丁寧に言葉を選び、背景を説明する努力を。その時点で、もう心の鎧を脱いでいたのかもしれない、と今では思います」


当日は4人で参加されましたが、実際のワークはどのような体験でしたか?


「チームで活動できるものだと思って行ったら、1日中別々の活動になってびっくりしました」

AoTでは、ワークごとにメンバーがシャッフルされ、さまざまな会社・立場の人たちと対話を重ねていきます。竹ノ下さんたちも、結果的にほとんどの時間を別々のテーブルで過ごしました。

「最初は、せっかくチームで来たのに一緒に活動できないんだ……と、ちょっと残念に思わなくもなかったです。でも振り返ると、それがすごく良かったんですよね。それぞれが異なる場で得た気づきや視点。それがお土産、あの朝渡された名札に、ふりかえりで書き込んだアクションとして持ち帰ることができたんです。これが良かったです


別々の体験を持ち帰ったから、チームになれた


AoTのあと、参加した4人では、どんなふりかえりをされたんですか?


「翌週、参加したメンバーで時間を取って、ふりかえりをしました。まずはそれぞれが、名札に書いたアクションを見せ合ったんです。AoTの最後、その日一日の体験を経て、自分がこれから取り組みたいと思った行動を名札へ書き込んだのですが、同じイベントに参加していたにもかかわらず、そこに書かれていた言葉は驚くほど違っていました。全然違う視点で、全然違う言葉が並んでいて。それがまず面白かったですね。同じ会社のメンバーなのに、他社の人と話したことで、こんなにも受け取るものが変わるんだなと。ふりかえりの場では、『他社の人と話せたのが良かった』『社外の視点を交えて考えられたのが新鮮だった』といった声が次々に出てきました。AoTのワークではチームとして一緒に行動する時間は多くありませんでしたが、だからこそ、それぞれが異なる体験を持ち帰ることができたとも言えると思います」

「同じことを一緒にやったから一体感が生まれた、というよりも、別々の体験を持ち帰って、それを共有したことで、チームとしての一体感が生まれた感覚でした」

「そして、メンバーの一人が、『自分のチームでもATTを描くことにしました』って言ってくれて。それを聞いたときに、あ、ちゃんと持ち帰ることができたな、と思いました」

AoTで得た学びが、その場限りの気づきではなく、具体的な行動として現場へ向かおうとしている。その兆しを、竹ノ下さんは確かに感じていたようです。


AoTを経て、今のご自身や仕事への向き合い方に変化はありましたか?


「以前の私は、定時以外の時間は、自分の学びの時間、成長の時間と考えていました。いつかそれが会社や社会に影響するような活動であるということを信じて。でも今回AoTに参加して、直接、今の仕事やチームに返ってくる学びをチームで体験できたことは大きな収穫です。今では残業してでも成果を出してチームとしての実績を積み上げていきたいと思っています

現在の仕事について、竹ノ下さんは「面白い」と感じているといいます。

「今の部署で私はリーダーですが、今までやってきた仕事とは全く違っていることをしているのでわからないことだらけなんです。でも今は分からないことは“教えてください”と言えるし、助け合える。そうすると、不思議と仕事が前に進むんです。今回のAoTはその活動を後押しするものになりました」


最後に、AoT実行委員会に向けて、一言お願いできますか?


「今回参加してみて感じたのは、すごくよく考えられて、工夫された設計の場だな、ということでした。ただ集まって話して終わり、ではなくて、ちゃんと次の行動につながるように考えられている。一人で学ぶ場ではなく、誰かと、そして組織とつながりながら変化していく場だったと思います」

「自分の立場やチームの状況が変わったタイミングで参加すると、また違う気づきがありそうなので、次があれば、ぜひまた参加したいですね。今度は、また違うメンバーを連れて」


個人の変容が、組織を動かし始める


AoTは一日限りのイベントでした。しかし、竹ノ下さんのように「鎧を脱ぐ」体験をした人の中では、その後も変化が続いていきます。

一人で学んでいた人が、仲間を連れて場に立つ。 個人の問いが、チームの問いへと開かれていく。

その小さな一歩が、組織の未来を静かに動かし始めているのかもしれません。

竹ノ下さんの変容は、The ART of Transitionが目指している世界を、確かに体現していました。

 

インタビュー:AoT実行委員 株式会社Hyper-collaboration 寺嶋 広明

 
 
 

コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。
bottom of page